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60年代後半生まれの独身女が日々考えたことをつづります


by kiriharakiri
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amato Alfredo(41才)

とうとう『椿姫』の音楽・メロディは全てが素晴らしい!とか言い出している自分・・・。私は一体今までこのオペラの何を聴いていたのだ・・・?(つまり耳が節穴ってこと・・・。)

それはともかく、やっぱり執着しているのはゼッフィレッリのオペラ映画です。クライバーのCDでも目頭が熱くならないこともないのですが、映画のほうが心を動かされます・・・。耳節穴なヤツには音楽だけでは不足で目から入ってくるものが必要なのかもしれません(でも「オペラは音楽が1番!」という考えは変わりませんよ)。

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ゼッフィレッリの映画『椿姫』は、美しい衣装に豪華なセット、考え抜かれたカット割、そして歌手やその他の出演者の達者な演技等など、目に映るもの全てが素晴らしい!音楽は感情を直に揺さぶりますが、その揺さぶりを増幅させるのが「目から入ってくるもの」の力だと思うのです。この映画にはその力が(それも強い力が)あると感じます。ゼッフィレッリが監督した他の2つのオペラ映画(『カヴァレリア・ルスティカーナ』と『道化師』)を観たときにも同じ力を感じました。

「目から入ってくるもの」には、オペラの音楽の素晴らしさをアップさせるものもあれば、ぶち壊すようなものもある、そういうことだと思います。(アップさせるもの作ってください、オペラに関わる方々!)

さて、なんだかエラソーなことを書きましたが、ゼッフィレッリの映画『椿姫』に執着している理由の一つ(それも最大の、かも)は、これに出てくるアルフレードが素敵だからに他なりません。このときのドミンゴはなんて格好いいんでしょう!

(『椿姫』あらすじとユーチューブへのリンクは2008年5月5日にあります。)

アルフレードはオペラの冒頭で友人のガストーネに連れられてヴィオレッタのサロンにやって来て、「あなたを崇拝する男ですよ」1とヴィオレッタに紹介してもらいます。アルフレードもガストーネもまだマントを着たままで、アルフレードはシルクハットを脱いでうやうやしくヴィオレッタの手にキスします。(ここまでアルフレードは無言。)

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私はこの時点ですっかりアルフレードに目が眩んでいるのですが(笑)、ヴィオレッタは全然です。いい男には慣れている、という設定ですもんね。私がいい男には慣れていない(そんな人、滅多にいないもん)、というのは現実・・・。

その後アルフレードは乾杯の歌を歌いますが、歌はもちろんのこと立ち居振る舞いも洗練されていて、とてもぽっと出の青年とは思えません。唯一ダサいところは、ヴィオレッタに単刀直入に「1年も前からあなたのことを想っています。愛しています。」と告白した、ということ。(しかしそれもヴィオレッタにはかえって「効果的」だったわけですし。)

帰りがけには

Io son, Io son felice!
(私は、私は、幸せだ!)
Quanto, quanto v'amo!
(とっても、とっても、あなたを愛してます!)
Addio, addio.
(さようなら、さようなら)

このように同じ言葉を繰り返すんですが、ここがいかにも嬉しさに舞い上がっている若者、という感じがして私はとても好きなんです(もちろんドミンゴの歌も演技もバッチリだから、でしょうが)。ここはCDなりDVDで聴いていただくしかありません。

第2幕第1場の冒頭ではアルフレードがヴィオレッタとの3ヶ月間の幸せな日々について歌っています。(この歌は5月5日にリンクしてあります。)映画ではここで二人の仲睦まじい様子を映像で見せている、ということは既に書きましたが、これがもうベタ甘で捻り無しですが、好きです。と言うか「あぁぁ~羨ましい~」というのが正確なところでしょうか(笑)。

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第2幕第1場の終わりでアルフレードはヴィオレッタからの別れの手紙を受け取り大ショックを受け「復讐だ!」とばかりに第2幕第2場でフローラのサロンに乗り込みます。このサロンに乗り込んだときのアルフレードが「やあ、諸君」てな感じで挨拶するんですが、これがまたニヒルな感じでよろしい。

で、怒って「復讐だ」とか言っているから、ヴィオレッタなんて許すもんか!ということかと思いきや、そうではなくて、言葉は刺々しく皮肉を言っているのに、ヴィオレッタを必死で取り戻そうとする。この部分も5月5日にリンクしましたが、怒っているアルフレードがヴィオレッタを乱暴に扱う様子が・・・結構気に入っているんですよ・・・自分、実は結構趣味が悪いのかも・・・いや、ここの音楽すごくいいから(だということに)。それにドミンゴのアルフレードの歌い方も単なる乱暴男のそれとは違うように思えるし。

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お金のことでヴィオレッタに愛想を尽かされたと思ったアルフレードが、皆を呼んで「この女が何をしたかご存知ですか!?」と切り出すシーン、アルフレードは涙目です。怒りとか悔しさとか嫉妬とかゴッチャゴッチャで、そして若くて直情的なものだから、やっぱりここは涙がこみ上げてくるでしょう・・・。しかし感情に任せてヴィオレッタにお金を投げつけてしまった後で激しく後悔するわけですが、その様子も・・・ドミンゴは上手です。怒っても泣いても端正なアルフレード。

第3幕は、勿論ヴィオレッタとの再会のシーンが一番ドキドキするシーンですが、マントをはためかせて走ってくるアルフレード(←私、マントが好きなんです・・・)、ヴィオレッタと抱き合って、

O mia Violetta! mia Violetta!
(私のビオレッタ!私のビオレッタ!)
Amato Alfred! Amato Alfred!
(愛するアルフレード!愛するアルフレード!)

ああ、よかった・・・!

で、アルフレードはヴィオレッタをひょいと抱き上げて長椅子まで連れて行きますが、これはドミンゴの得意技らしい(笑)。いや、男なら女の一人や二人抱き上げられなくては!(←普段自分が言っていることと違うような気もする。)

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そして二人で「パリを離れて」を歌い出すわけですが、アルフレードはヴィオレッタが瀕死とは知らないし、ヴィオレッタも死を覚悟しているとは言え、あと10分以内に死ぬとは思っていないでしょうから泣いていません。でも聴いている私は結末が分かっていますから、この辺で涙がポロポロしてきます。

歌が終わると、ヴィオレッタが今にも死にそうだということがヴィオレッタにもアルフレードにも分かり、互いに涙涙で辛い内容の歌を歌うことになります。ドミンゴは悲しそうに歌うのがとても上手だと思うのですが、ここでもやっぱり上手です。単に悲しい、ではなく悲痛に、ですかね・・・。

ヴィオレッタに一歩一歩確実に死が近づいていること、これに関しては映像ではなくオーケストラの演奏が雄弁に伝えます。(そんなことを「雄弁に」と言うのもなんですが。)

ヴィオレッタがいよいよ最後のメッセージをアルフレードに伝えようと「近くに来て、アルフレード」と呼びかけると、向こうを向いていたアルフレードは振り向きざまに頬の涙を手で拭ってからヴィオレッタの側に行きます。この涙を拭う様子もとても印象的で気に入っています。

しかしアルフレードの願いもむなしくヴィオレッタは死んでしまい、アルフレードは悲しみにくれて・・・ end


この映画の製作年は1982年ということなので、ドミンゴは41歳。ちょうど今の私と同じくらいですね・・・だから、このちょっとオジサンなアルフレードが気に入ったのかもしれません。実際、外見に関しては初々しい青年と言うにはやや無理があると思います。私は全然気にしてません、と言うより、このほうがいいかも。(だって目鼻立ちがハッキリしていて背が高くてがたいが良くて足が長くて優しそうで・・・云々。)

じゃあ、ドミンゴがもっと若いときだったらもっと青年っぽくてよりよいアルフレードだったのかと考えると、私は必ずしもそうとは思いません。クライバー指揮の『椿姫』が録音されたのは1976年から1977年にかけてということなので、ドミンゴが35~36歳のとき、ということになりますが、このときの写真がコレ↓。ヴィオレッタ役はコトルバシュです。

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ずんぐりむっくりしていて、髪や髭は黒く、なんだか熊五郎って感じ・・・。いや、田舎から来た純朴青年の外見に出来るだけ忠実に、ということであればコチラの方がいいでしょうが。CDを聴いている分には全然問題ありませんが、もし映画にこの熊五郎が出ていたら、きっとこれほどこの映画に引き込まれなかったでしょう。少なくとも目は眩まない(笑)!

この映画ではドミンゴの髪は大分明るい色なので、多分ゼッフィレッリの発案で染めているのではないでしょうか(似合ってる!)。それからダイエットをしたのかもしれません。格好良くなるのもなかなか大変なのかも。

そんなこんなで、暫くは〈41歳の)アルフレードのことを考えつつ

Amor e palpito
Dell'universo intero,
Misterioso altero
Croce e delizia al cor

を歌っていると思います♪
by kiriharakiri | 2008-05-08 23:38 | 音楽♪