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60年代後半生まれの独身女が日々考えたことをつづります


by kiriharakiri
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代理母

タレント向井亜紀夫妻のときには何も書かなかったですが、今日もまた代理母のニュース。思ったことを書いておこうかな、ということで。

皆さん当然知っていると思いますが、このニュース。

子宮を摘出して子どもを産めなくなった30歳代の女性に代わり、この女性の卵子を使って女性の50歳代の母親が妊娠、出産していたことを、実施した諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘(やひろ)院長が14日、明らかにした。(読売新聞)

代理母かー、SFの世界みたい、なんて言っていては時代遅れなんでしょうが。生殖テクノロジーの進歩がもたらした新しい事態、一体どうすればいいわけ?ということが議論されているところですけれど・・・。

代理出産/代理母/代理懐胎に関する基礎資料 - 最近の動き。東京大学大学院医学系研究科 生命・医療倫理人材養成ユニット

日本産科婦人科学会「代理懐胎に関する見解」(平成15年4月 )を読みますと、私にはすごくまっとうなことを言っているように思えます。

にもかかわらず、「代理母」を実施したこの根津八紘という医師。名前に聞き覚えあると思ったら、既に「代理母出産」実施していた人なのね。さらには「祖母が孫を産む」形の代理出産をもう一組検討しているそうで・・・なんなの、この人は、勝手に突っ走って!と思うけど、本人は「自分は正しいことをしている!」と信じているんだろうなぁ。この人を抑えたところで、こういう人ってきっと他にも出てくるんだろう。

日本にも代理母出産で既に生まれている子供がいるわけで、この子たちの法律上の扱いをどうするかという問題は早急に結論を出す必要があるでしょう。子供たちにとって最善の法律が整備されることを望みますが、私には法律の詳しいことは分りませんので、そのことについては書きません。

私が考えたのは、代理母って倫理的にどうなのかなー、ってこと。やろうと思えばやれるけど、それをやっていいのかいけないのか、という問題。

先に結論を言うと、私は反対です。代理母出産を認めるべきではないと考えます。理由は・・・オリジナリティーありませんが「日本産科婦人科学会の代理懐胎に関する見解」が言っていることとほぼ同じです。(以下斜体はこの「見解」で使われている文言を使わせていただきました。)

代理懐胎の是非について

1)生まれてくる子の福祉を最優先するべきである

代理母が出産した子に強い愛情が湧いて引渡しを拒否するトラブル、逆に依頼側が生まれた子が「パーフェクト」じゃなかった等の理由で受け取りを拒否するトラブルは実際に米国で起こっているわけですが、そういったことが子供の福祉に反するんじゃないですか、ということ。法を整えることでこれらのトラブルは回避されるのであれば、私はこの点は問題クリアだと思います。が、回避、難しいんじゃないでしょうか・・・。
 
2)代理懐胎は身体的危険性・精神的負担を伴う

今の日本は「産めよ増やせよ」だからなのでしょうか、妊娠・出産に伴う危険というのもがあまり知らされておらず妊娠すれば100パーセント可愛い赤ちゃんが生まれてくると信じている人も多いらしい、というニュースを聞いたことがあります。でも妊娠・出産というのは妊婦の健康・体を大きなリスクにさらすもの。そこまでの危険を代理母に負わせていいものか?「代理母がいいって言っているんだからいいんだ」で済むのか?疑問に感じます。

3)家族関係を複雑にする

これについては、「複雑」というのが「あの子は『複雑』な家庭環境で育った」などといったふうに使われる「複雑」であれば、「複雑=ダメ」ではないでしょー!と思いますが、法律的に複雑な事態になるのはどうなんでしょう、回避すべきかな。法整備でなんとか出来る範囲内であれば、クリアかと思いますが、1)と同様、なんとか出来る範囲に収まるのかは大いに疑問です。

4)代理懐胎契約は倫理的に社会全体が許容していると認められない

最後はやっぱりコレですね・・・。「見解」では「代理懐胎契約は,有償であれば母体の商品化,児童の売買又は取引を認めることに通じ,無償であっても代理母を心理的に,又は身体的に隷属状態に置くなどの理由により,公序良俗(民法90条)に反するという見解が有力である」と言っています。私もそう思います。これはクリアされないのではないでしょうか。

カネで「母体」を買ってもいいのか?私は臓器をカネで買うべきではないのと同じように、カネで母体を買うことには賛成できません。

じゃあ、ボランティアならいいのか?以前テレビで米国の「ボランティア代理母」がインタビューに答えていたのを見たことがあります。妊娠・出産できる体を持っているのだから、それを使ってボランティア=よい行いをしていると考えているようです。でも例えば妊娠出産が順調でなかったら?命をかけた「ボランティア」を気軽に引き受けることに問題はないのか?とてつもなく危なっかしいとしか思えません。

さらに「見解」では「現在の状態のまま放置されれば営利を目的として代理懐胎の斡旋をする者又は機関が出現し,経済的に弱い立場にある女性を搾取の対象とし,ひいては実質的に児童の売買といえる事態が生じかねないので代理懐胎の斡旋についても禁止する」と述べられており、私も同じことを懸念します。

さて、根津医師は、「親子愛に基づく『祖母が孫を産む』代理出産」は、上記の問題点の幾つかはクリアされる(例えば、生まれた子供の引渡し拒否とか、金銭の介在とか、その辺りがクリアされると思っているようです)、だから将来は、こうした「祖母が孫を産む」ケースに絞って代理出産を行っていくそうです。

じゃ、実母がいなければ姑で、とか?娘のために代理母やる人がいるなら、息子のために代理母する人もいるでしょうよ。姉妹は、既に根津医師には実績あるそうですが、止めるのかな。姉妹の「愛」ではちょっと弱いと判断したのか?

親子愛かぁ・・・「子供が絶対に欲しい!」というのも「愛」なのかな。「愛」などを持ち出して強行突破といったところでしょうか。それはズルだと思うんですが。愛を持ち出されてもひるんではいけない。問題をしっかり見据えなくては。代理母、私は反対です。

・・・うん、愛と欲望の境目は結構曖昧かもと思います。
by kiriharakiri | 2006-10-15 22:15 | 社会一般